表現としてのテンポ

「やさしい花」のつぼみが膨らんで咲くところ
「やさしい花」のつぼみが膨らんで咲くところ

 生徒のTさんがブルグミュラーの「やさしい花」を聞かせてくれました。

 左右の音のバランスも良いし、初め出てきた複前打音〔装飾音符の一種〕きれいに弾けています。

 ただ、デリカート〔繊細に〕な反面、生き生きととした感じが薄い印象。

 

 少しテンポが遅いのかな?と思い、そう指摘したところ、楽譜で指示されているテンポの何パーセントくらいにすれば良いですか?と訊かれました。

 「16分音符などの細かい音符がなくて、テンポも速くないから、80パーセントくらいかな?」と答えてから、ふと、前回のレッスンのことを思い出しました。

 

 Tさんが「この曲の始まりって、お花のつぼみが膨らんでいってパアッと咲いたような感じがしますよね」とおっしゃったので、「そう、そう」と、私も共感したのでした。

 そこで、今回はTさんのイメージを生かして、「つぼみを膨らませて咲かせるには、それだけのエネルギーが必要ですよね。そのエネルギーを音楽を前進させる力に変換して、生き生きととしたテンポで弾きましょう」、ということにしました。

 

 テンポアップの練習では、まず、作曲者が何を表現しようとしてそのテンポに設定したのか(史実でなくて自分なりのイメージ)を考える。そして、その表現にちょうどいいテンポを目指すのがお勧めです。

 楽譜に書いてあるからと、テンポの数字だけを追って、ただの指の運動にならないようにしましょうね。


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