サンタクロースのお爺さん?

Knecht Ruprechtの絵
Knecht Ruprechtの絵
シューマン「サンタクロースのお爺さん」の冒頭
シューマン「サンタクロースのお爺さん」の冒頭

 「ユネスコの評価機関がナマハゲなどの来訪神を無形文化遺産に登録するよう勧告した」というニュースに触れて思い浮かんだのが、シューマンの「ユーゲント・アルバム」の中にある「サンタクロースのお爺さん」というピアノ曲です。

 そんな題名ですが、イ短調だし、とても低い音から始まるし、アクセントやフォルテ〔強く〕もみっしり書き込まれているし、サンタクロースよりはむしろモンスターが出てきそうな曲です。

 

 日本語のタイトルに併記されているドイツ語「Knecht Ruprecht」で検索してみると、「従者ループレヒト」と出てきます。

 ループレヒトは、聖ニコラウスの従者で、聖ニコラウスの祝日に、庭ぼうきの先端のような枝のムチを持ってやって来ます。良い子は聖ニコラウスからプレゼントをもらい、悪い子はループレヒトのムチでお仕置きされるそう。

 

 日本風な怖い音と言えば、雷鳴のような太鼓のドロドロと、悲しげなすすり泣きのような笛ですよね。

 一方、ドイツ風の怖い音は(この曲とシューベルトの「魔王」の2曲だけで思ったのですが)、疾走感のある低音と、猫なで声のようなやわらかいアルトの音みたいです。

 途中で、ヘ長調のピアノ〔弱く〕になりますが、やさしい声で招きながらもムチを隠し持っていると思えば、逃げ出したくなりませんか。

 

 シューマンの「サンタクロースのお爺さん」は、走って追いかけて来て、時には甘い声で呼び止めたりもするドイツ風のナマハゲをイメージしながら演奏するのがお勧めです。

 

 

※ ご参考までに、ピアノ曲に関するブログです。

  → 「絵画的に見る楽譜」(ブルグミュラー「タランテラ」)

  → 「シャープとフラットの話」(カバレフスキー「ワルツのように」)

  → 「大切なパートは?」(パーセル「シャコンヌ」)

  → 「歌うように弾く」(マルティーニ「愛のよろこび」)

  → 「ガボットにチャレンジ」(ヘンデル)

  → 「セキレイの『ボン』改め『トン』」(ブルグミュラー)

  → 「表現としてのテンポ」(ブルグミュラー「やさしい花」)

  → 「『スズメに逃げられない』弾き方」(ベートーヴェン「エリーゼのために」) 

  → 「それぞれの表現」(グリーグ「夜警の歌」)

  → 「強拍 vs アクセント」(チャイコフスキー『子どものアルバム』より「ワルツ」)


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