点字を勉強中の夫に「日本語の中にアルファベットが混じっている文章はないか?」と訊かれました。アルファベット混じりの日本語の点訳が宿題に出たそうです。
ピアノの上にチャイコフスキーの『こどものためのアルバム』を出しっぱなしだったので、その解説文のページを広げて差し出しました。
2日かけて点訳を終えたった夫が楽譜をパラパラとめくりながら、「ポッチーズ・・・」とつぶやきました。
何のことかと思ったら、「pochiss」と書いてありました。英語読みしたら、「ポッチーズ」と読めるかも?
正解は、楽譜によく使われるイタリア語で、「ポーコ(ほとんど~でない)」の絶対最上級「ポキッシモpochissimo」の省略形。「ごくわずかに」という意味だと説明しました。
すると、「100円ぽっきっしも」と夫がぽつり。
確かに、日本語の「ぽっきり」と意味も音も似ていますね。
実は、イタリア語と日本語は、意味が近い言葉同士の音がなんとなく似ていることがあるんです。
「ヴォーチェ」は「声」の意味ですが、「ソットヴォーチェ」は「ひそひそと」。「ターント」は「たくさんの」。「アマービレ」は「(ワインが)中甘口の」。「スービト」の「すぐに」はちょっとかすってる感じ?
そう言えば、ずいぶん前のことですが、生徒さんとこんなやり取りがありました。
わたし:「メッゾ・フォルテの意味は?」
生徒さん:「めっちゃフォルテ!」
この場合、イタリア語(mezzo半分の)と大阪弁(非常に)は、音がなんとなく似ていても意味は反対でした。
夫の点字の先生からの又聞きですが、点字というのは、文字表記より先に楽譜表記が体系化されたそう。
目の不自由な人でも、耳で聴いた誰かの演奏を再現するのではなく、楽譜を介し自分の頭で読み解いた音楽を演奏することができるようになった、というのは素晴らしい功績だと思いました。
生徒さんたちにも、「耳で聴く」と「(できれば行間まで)楽譜を読み解く」の両方を大切に音楽と向き合ってもらえたらいいな、と思います。